竹内銃一郎のキノG語録

こんなことで煮詰まってマス。  劇作の労苦④2015.11.12

「ランドルト環」。順調に全体の半分量まで達したのだが、S5の「恐怖(私の友人の話)」を書こうとして只今座礁中。「わたし」が友人の妻と不倫する話で、一応の書く手順は整えたのだが、以前にも書いたように、全体から言えばドーデモいい些細なことで躓いている。

友人は30歳で役所を辞め、いまは田舎で農業をしている。と言っても、単なるお百姓ではなく、農場経営をしている、ということかと思われるが。その友人が朝の3時に出かけるという。なにをしにどこへ? チェーホフの小説にはそれがなにも書かれておらず、それをはっきりさせたいと思って、とりあえず、少し遠くまで野菜の種の買い付けに行くことにした。じゃ、なんの種にする? 小説の設定では7月、場所は(推定)ペテルブルグ近郊。1900年前後のロシアの南の地域で、この時期になんの種を撒くとすれば正解なのか?

最初は、ひまわりがいいのではないかと思った。友人がわたしに「9月になったらまた来てくれよ。その頃には畑いっぱいにひまわりが咲いてるはずだから」なんて台詞はいいのじゃないかと思ったのだ。しかし。ひまわりはどうも、同じロシアでも南の方でしか栽培してないらしいことが判明。それから、キャベツ、大根、ビーツ、かぶ等々はどうかとウィキで調べ、これらは、物語の季節の設定を少し前倒しすれば、事実関係に関しては問題ないのだが、もうひとつピンとこない。

「恐怖」の登場人物は、わたしと友人と友人の妻、それに友人の息子。小説には<四十人の殉教者>と呼ばれる、身を持ち崩した魅力的な男も登場するのだが、長さの関係でこれはカット。ここは10枚程度、20分くらいで収めなければならない。

ファーストシーンをどうするかも考えあぐねている。最初に舞台にいるのは? わたしと友人か、わたしと友人の妻か、それとも3人? あるいは、空舞台で始めてそこに誰かと誰かが登場することにするのか、等々。A案ならこういう流れにして、B案ならこういう風にと、将棋や囲碁みたいに10手くらい先を読む。こう言ったら、相手はこういうから、次にはこう出て …と、すべてシュミレーションして、いちばん面白くなりそうなものを選ぶわけですが。メンド臭いでしょ。

気晴らしにヤフー・ネットで「竹内銃一郎眠レ、巴里」を検索する。「眠レ、巴里」は、来年1月に近大の4年生2人が上演する。これまでどれくらい上演されているのか? しかし。出てくる出てくる、わたしになんの断りもなくなされている上演記録が。前回にも書いたが、わたしの戯曲を上演してくれるのはまことに嬉しいかぎりなのだが、なんで断りを入れてくれないの? しかも満更知らないわけでもない人たちの公演もそれには含まれていて、不愉快とまではいかないが、な~んか釈然としませんな。

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