「ランドルト環」を書きつつ、「あにき」にウルウル。2015.12.03
いやあ、終わりました「ランドルト環」。先月中に終わらせる予定が3日オーバーしてしまったし、出来れば45枚、長くても50枚という計算が、最終的には50枚を少し超えてしまったが、ともに微差ということで、大目に見て下さいな。(誰に言ってるのか?)
今日の午前中にはほぼ書き終え、午後は今週からCSのTBSチャンネルで始まった、健さん主演の「あにき」を見る。シナリオを書いている倉本聰はわたし、あまりお好きではないので、最初はどうかなと疑りのマナコで見ていたのだが、悔しいことに面白いのですよ、これが。大原麗子、秋吉久美子、倍賞千恵子、といった女優陣が揃って素晴らしく、島田正吾、田中邦衛、小鹿番等の脇役陣も手堅く決めていて、さらに、忘れてならないのは春川ますみ。いいんだ、このひとが。出す声が全部台詞にジャストミート! 唸ってしまう。まあ、年齢を重ねてるひとは誰でも知ってる名優だが、俳優になる前は日劇ミュージックホールで裸で踊ってたひとですからねえ。凄いです。代表作といわれているのが「赤い殺意」で監督は今村昌平だが、これが彼の最高傑作!
健さん主演ということで、フツーのドラマの3倍くらい製作費をかけているのじゃないだろうか。出演する俳優も豪華ならセットもまことに丁寧に作ってあって、演出以下スタッフ一同、いつもの3倍くらい頑張ったのではないか。
3倍と言えば。前に触れた山田太一の「早春スケッチブック」に比べると、台詞の量が三分の一くらい。ということは、放映時間はほぼ同じだから、台詞のない時間が多いということで、これも健さんが主役だからだろう。こんなに台詞の少ないTVドラマは、今ではもう視聴者が受け入れないだろうが、その前に制作サイドが許さないだろう。しかし。かと言って、健さんは無口な男という設定かというとそうじゃない。健さんの映画には、大きく分けると「無口系」と「軽口叩き系」があって、前者の代表が「日本侠客伝シリーズ」「昭和残侠伝シリーズ」等で、後者の代表が「網走番外地シリーズ」だが、「あにき」は明らかに後者だ。笑わせてくれる。健さん=無口系と思っているひとは、これを見たらかなり驚くのではないか。放映されたのは1977年で、無口系と言えるあの「幸福の黄色いハンカチ」も同じ年に公開されている。どっちが面白いのかと言えば断然「あにき」の方だ。
夕ご飯を食べた後、「ランドルト環」を仕上げる。前にも書いたが、この戯曲は、チェーホフの短編小説をもとにした7つのシーンの間に、三つの「稽古場風景」が挿入されているのだが、読み直すと、「稽古場」の台詞のやりとりが、どこか「あにき」調になっていて、笑う。チェーホフものとのチグハグがアンバランスでいいのではないかとも思う。
「馬のような名字」では、競馬歴40年余のキャリアを前面に押し出し、浦雅春氏の翻訳にはない、珍名奇名を捻り出す。原作の最後のオチは詰まらないので、これも大きく変える。いちばんグッドな珍名さんは「ダバエンコ」だが、最後は「クロウマミターリン」で決める。これは「黒馬を見たり」というロシアの小説のタイトルのもじりなのだが、そんな小説知らない? いいんです。だって、音の響きが面白いから。