竹内銃一郎のキノG語録

こんな日が続いたら、病気になってしまう。2015.12.07

昨日は泣いたり笑ったり、あまりの悔しさに歯ぎしりしたと思ったら、厳しい現実を突きつけられて落ち込んでしまったりと、実に怒涛の日曜となった。

競馬がある土日は、まるで遠足の日の朝の小学生のように、その気はないのに早起きしてしまう。競馬中継が始まる10時までにはまだずいぶん時間があったので、土曜に録画しておいた「早春スケッチブック」を見る。

これは、ともに子どもを持つバツイチ同士が夫婦となった家族の物語だが、さしたる問題もなくここまでやって来たらしいこの家族に、思わぬ嵐が吹く。ずっと父親は亡くなったと聞かされてきた高3になる息子の前に、実の父親が現れたのだ。以前に触れた、樋口可南子が演じる<謎の女>に拉致同然に連れられて行った先が、<父親>の住まいだったのだ。その時はむろんそんなことは明かされなかったのだが、あれこれあって、高3の息子はその事実を知り、大晦日の夜、その男の住まいに行って、静かに現在の<気持ち>を男に伝えるのだが、それを聞く男=山崎努が、自らの<生き方>に対する悔恨、自分の知らない間に大きくなっている息子への驚き、そして息子の現在の複雑な心境を慮って等々がおそらくないまぜになったのだろう、ハラハラと涙を流す。しかし、これがただの涙ではない。水戸芸術館の専属劇団ACMの舞台の演出をしたとき、俳優たちから、「俳優は鼻水垂らして一人前だ」という、芸術監督だった演出家・鈴木忠氏の「ありがた~いお言葉」を聞いて笑ったことがあるが、この時、山崎は涙だけでなく鼻水を垂らしていたのだ。こんな芝居を見たのは、少なくともTVでは初めてだ。もらい泣きではなくそのことに感動して、わたしは泣いてしまった。

歯ぎしりしたのは、昨日のメインレースのチャンピイオンズC。勝ったサンビスタは16頭中12番人気でまったくの人気薄だったが、パドックの気配は出走馬中一番で、この馬を単穴、つまり3番手に評価し、あとは2番人気のホッコータルマエを本命、8番人気のロワジャルダンを対抗にし、この3連単ボックスを買っていた。直線でサンビスタが抜け出し、後方からあとの2頭も差し足を伸ばしてきて、この3頭で決まれば配当50万で500円買っていたから250万円ゲット! と思ったのも束の間、余計な2頭が凄い末脚でやってきて、ロワ4着、タルマエ5着で、クーーー!

8時過ぎにもう一度。「M1」で敗者復活戦からトレンディエンジェルが勝ち抜いたことを告げられた時、思わず感激の涙が …。本戦で高得点をあげ、残り3組に入った時点で、彼らの優勝を確信。他の2組の、銀シャリにわたしは一度も笑ったことはなく、ジャルジャルには1本目を上回るネタがないことが明白だったからだ。トレンディAは、適当にやっているようで実は綿密な計算をしている。M1では4分という限られた時間をどう案配すのかが問われるわけで、だから多くのコンビはどうしても早口でまくしたてることに終始してしまうが、彼らの決勝のネタでは、おバカなギャグを連発して、途中に、斎藤さんが相方の尻を撫でまわすというお下品な沈黙の時間を挟んで、その後にまたギャグの連射するという、見事な緩急のリズムを刻んで見せた。編集能力が秀逸! 優勝が決まった時には拍手喝采。まるで他人事なのに。

その後に、NHKで「老人介護」の無残な実態を知らされて、ドスーンと暗い気持ちになってしまって …。昨日の一日を映像で見たら、わたしほとんど統合失調症患者ではないかと思われるだろう。

 

 

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