竹内銃一郎のキノG語録

今日は驚きの連続で …2016.11.11

ウィキで「庵野秀明」の項を見る。膨大とも言える分量があり、斜め読みする。もちろん、当人が書いているわけではないから、書かれている内容にどれほどの信憑性があるのか分からないが、彼が影響を受けたものとして挙げられている作家・作品名のほとんどすべてが、わたしの関心の外のものであることに、改めて驚く。その大半を占めるアニメ関係はもちろん、映画監督の岡本喜八、実相寺昭雄、小説家として村上龍の名もあったが、この人々もまたわたしのストライクゾーンから外れている。こんなに趣味嗜好がわたしと重ならないひとは記憶にない。となると、ああだこうだと「シン・ゴジラ」に関する不満を書き連ねること自体がナンセンス極まりないというか。

久しぶりに、と言っても二週間ぶりだが、祇園四条に出て本屋を覗く。祇園四条界隈にはわたしの知る限り大型書店が三軒あり、まずはその中の一軒、駅からいちばん近いブックファーストへ。これまで何度も覗いているのだが、今日初めて気がついたことがあり。それは、「映画演劇コーナー」に戯曲が一冊も置かれてないこと。出版業界はいまや風前の灯火状態にあり、売れそうにない演劇関係の本などに手を出す余裕がないことは百も承知だったが、まさか戯曲が一冊もないとは! 確証はないのだが、10年くらい前ならば、大型書店には戯曲の10冊20冊は置かれていたのではないか? わたしの最初の戯曲集「檸檬」が出たのは30数年前だが、その時は、新宿の紀伊国屋書店や池袋の芳林堂などでは、目の付きやすい場所に平積みされていたのに。ああ、世の中、変われば変わるものだ。それから烏丸方面にあるジュンク堂書店へ。ここでもオヤオヤという驚きが。店を入ってすぐのところに雑誌各種が置かれているのだが、確か二週間前に行った時にはあったはずの『現代思想』が、いくら探してもない。店のひとに聞くと、3階に移動しましたという。確かに、その階には思想関係の本が置かれているのだが、島流し感は否めない。厳しいーッ。

更にもうひとつ。河出書房新社から出ている『日本文学全集』の最新刊(多分)は、能・狂言・歌舞伎等の台本を集めたもので、それを伊藤比呂美、いとうせいこう等々が現代語に翻訳していて、狂言担当は岡田利規。パラパラと読んで見ると、岡田以外は、いわゆるノベライズ、つまり、小説風に書き換えていて、岡田だけは台本の態にしている。いわゆる古典芸能の台本は、人形や俳優の身体(性)を軸に書かれたもので、それを今風に、それも現代口語に直すこと自体がわたしには無意味に思われ、それを演劇的には素人がやるのならともかく、なんで岡田が、とわたしはその無謀さに驚き、むろん、それが面白ければいいのだが、退屈極まりない代物ときているから、「なんなんだ、これは?!」と更に更に驚いたのである。

ジュンク堂で購入した『現代思想 「相模原障碍者殺傷事件」特集号』を、喫茶店に入って少し読む。そして、この事件が起きた背景と、トランプ勝利となった米国大統領選の結果、さらには、「シン・ゴジラ」や「君の名は」が多くの観客を動員していることには、なにか共通するものがあるのではないかと思う。強引にまとめてしまうと、それは、弱者排除の思想でも、現状変化の待望でもなく、破壊・破滅への過度の傾斜であり、言葉への不信の露出ではないだろうか。

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