竹内銃一郎のキノG語録

「夢ノ旅路」公演当日に配布するパンフの原稿2017.10.18

ご挨拶
今月の11日でわたし、70歳になりました。当然とはいえ、20代の頃にはこんな歳まで自分が生きてるなんて、想像できませんでした。それ以上に、特段好きなわけでもなかった芝居をこの歳まで続けているとは。キャリア40余年! 自分でも信じられません。ほんとにわたしはわたしでしょうか?

「竹内銃一郎集成」と銘打った今回の連続公演は、今年の5月半ば、唐突に思いつき、そして、なんの目算も立てぬまま即始動。このスピードは我ながら驚きで、いったいわたしになにがあったのでしょう?

作家の多くは年齢やキャリアを重ねるにつれ重厚さを目指したり、逆に、枯山水=淡白系へと傾斜して行くのですが、わたしはそういう「成熟」を好みません。

先日、TVでジャン・ルノアール監督の「草の上の昼食」(1959年公開)を見て、ああ、これだこれだと興奮し、年甲斐もなくはしゃいでしまって。ヒロインを演じた女優さん(名前?)、その顔、体、演技、すべてが従来の基準(規格)から外れていて、そんな彼女の純朴な奔放さ、破格の美しさがこの映画の楽しさを象徴しています。草の上での昼食中、突然激しい風が吹き、その突風が、とりすました登場人物たちからあられもない狂態を引き出し、更には、彼らの心身にありうべからざる恋愛の火を点けるという、これは実にバカバカしいコメディなのですが、一方に、風に揺らぐ草や木々、それらにとまる虫たちを、子どもが息をとめて、じっと見詰めているような静謐なシーン多々もあり。この時、J・ルノワール65歳。重厚・淡白など微塵も感じさせず、まるで映画作りのイロハも知らない若者が、自らの好奇心のおもむくままに撮りあげた映画のような、ああ、なんという初々しさだ!

ひとはみな幾つになろうと何も知らない子どもです。ましてや今回は、経験の少ないリーディング公演で、しかも、初めての<破格>の劇場。軽はずみな知ったかぶりから遠く離れて、いざ、誰も知らない未踏の森へ。

本日はご多忙の中ご来場いただき、誠にありがとうございます。と言っても、これを書き終えつつある今日は、本番の数日前なのですが。(ああ、本番当日の天気が心配 …)

公演初日は今週金曜の20日です。まだまだお席は十分。是非ご来場を。お待ちしてま~す。

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