0からの出発 「竹内銃一郎集成」公演二日目を終えて2017.10.22
心配していたお天気、最悪の終日雨降り。それも決して小さくはない影響もあったかに思われるが、客席、まったくのスカスカ状態。これだけ入らなければいっそ気分がいい、と一方では思ったのだが、しかし。芝居の出来がかなり上がってきているだけに、もっと多くのひとに見てほしいと切に思っているのだが、明日も一日中雨降りのようだ。口惜しい。
雨降りで思い出すのは、わたしの最初の劇団、斜光社の旗揚げ公演。二日目だったか三日目だったか。天気予報では夕方から雨となっていて、後に演出を担当することになる、この時は舞台監督だった和田が、なにか屋根になるものを用意した方がいいのじゃないかと提案。林泉寺というお寺の境内での野外公演だったのだ。しかし、テントで客席を覆うというのに反発を感じ、いいよ、降ったら降った時だとわたしは言い。いや、それはダメだろと和田が強く言うので、渋々、ふたりで、あれは多分、和田の知り合いのところだったのだろう、電車に乗ってブルーシートを借りに行き。わたしは雨は降らない、あるいは、降っても小雨で、お客には我慢出来る程度にしか降らないと思っていたのだが。劇が始まって、半ばに達したころだったろうか、土砂降りに近い雨が降り出し、ああ、和田の言うことに従ってよかったと思ったが、それだけに止まらず、どうやって設えたのか、もうすっかり忘れてしまったが、とにかく臨時の屋根にしたブルーシートに雨が溜まって、客席の中央あたりが明らかにくぼんで低くなっている。そのまま放っておくと、雨の重さでブルーシートが外れ、客席の客が全員水浸しになる危険があるというので、和田とわたしとふたりで、進行している劇そっちのけで、客席に入り込み、棒でブルーシートの屋根を突いては、水を外に出していた。しかし、というかなんというか、壊れかけの屋根はあっても、壁にあたるもの、つまり、客席の横にはなにもない状態だから、実際は観客全員が横殴りの雨のために水浸しに近い状態になっていたのだが。そんな状況だったにもかかわらず、誰も途中で帰りはしなかったのだ。お芝居に関わって40年になるのだが、もっとも記憶に残る舞台と言えばあの日の舞台であり、もっとも感激させてもらった観客はあの日の観客である。少々大仰になるが、わたしの演劇は多分、あの日始まったのだ。
そして今日である。この日のスカスカの客席と、雨にも関わらず見に来てくれた10人ほどお客さん、そのほとんどはわたしの知り合いだったのだが、彼らに対しての感謝の気持ち、長く忘れることはないだろう。そもそもが、路上ライブから出発した歌手・グループのように、0からの出発を期して始めた今回の企画だ。予定通りとも言える。これ以上の下はないはずだから、あとは上昇一途といけたらいいのだが …
明日と言ってももうすでに日は変わっている。お時間がおありの方、ぜひご来場を。お待ちしております。