竹内銃一郎のキノG語録

繰り返される変身を鮮明に大胆に。  「花ノ紋」演出の指針②2017.11.06

長くなってしまいました。以下は、具体的に気づいたことを。
「あたま山心中」
子守歌。妹は思い出し思い出し歌っているので、多少音程があやしくても構いません。
妹の実年齢は70前後かと思われますが、時にはミチル=少女のように、時には三十台半ばの息子を持つ母のように、時には実年齢以上に老け込んでしまった老人のように。
大胆な変身を心掛けて下さい。
同様に。豊島も必要に応じて、妹の保護者=兄、妻を捨てて他の女と心中した、申し訳なさを抱えた夫、そして、認知症の母の介護に疲れて途方にくれる息子のように。観客どうこうというより、選んだらそれを大胆に演じ切ること。
「触ってもいいかい」と言って<あたま山の桜>に触れる芝居。譜面台の脚から触って、さらに虚空へ。
「酔・待・草」
ふたりの刑事、ブッチとサンダンスの親密度合いをどう表現したらいいのか。お互いの肩を叩きあうことが分かりやすい表現だとしたら、どの程度の強さで叩けばいいのか。
コーラスの前後で、ふたりの言葉の投げかけの調子を大きく変えたい。
さらに。目撃者・チャーリーと離れているときと、舞台に上がって彼を挟み撃ち状態にして言葉を投げかけあってるときも。つまり、台詞は似たような調子で書かれていますが、刻むリズム、ヴォリューム、メロディ等を三度、明確に変化させていただきたいな、と。
コーラス。チャーリーが入って3人になってから、もう少し長く歌われたい。さらに言えば、もう少し聞くに堪えうるものにしていただきたい。
やりとりの後半、チャーリーを挟んでのやりとり。チャーリーはもう嫌だ、帰りたいという意志を鮮明にすること。具体的には、もっと頻繁に立ち上がること。チャーリーが立ち上がって、それを刑事のどちらかが押しとどめ、という動き、ウエーブみたいに見えたら面白いが。3人の動きが台詞のリズムを作る、という具合になれば最高。事故=時効 あいにく=豚肉・鶏肉 等々、言葉遊びになっている音はことさらに強調して下さい。
「Moon guitar」
あんなも先に記した登場人物たち同様、変身を繰り返します。片言の日本語を語る女性が、突如フツーの日本語を話すひとになり、そしてリュウとの「麦秋ごっこ」では老女に。その変化を鮮明に。語るスピードの違いを際立たせた方がいいかも知れません。
あんなとタクミは、このシーンの前に一度会っただけですが、なぜか互いに魅かれあうものがあるようです。あんなはリュウの愛人ですが、このシーンには登場しないマオにも好意を持っているにもかかわらず。タクミには妻がいて、その妻のお腹には子どもがいて。(ともに不謹慎?)
タクミが殺しを引き受けると伝え、その練習をするくだり。不道徳というか非社会的というか、そういう世界に突っ込んでいく倒錯した喜びみたいなものが感じられたら。
二人が向き合う時、きちっと正対すること。ふたりがすれ違う時、ちょっと肩が触れ合って互いにドキマギするとか、そういうのがほしい。
今回はとりあえずこのへんで。

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