竹内銃一郎のキノG語録

2017のお回顧様2017.12.31

めっきり記憶力が衰えた。ひとの名前が思い出せない。昨日も「久本雅美」がなかなか出てこず。別に出てこないからといってなにも困ることはなかったのだが。それに引き換え、昔のひとの名前はすらすら出てくるのだ。今朝、NHKBSで黒澤明の「七人の侍」をやっていて、当然、出演者の大半はとうの昔にお亡くなりになっているのに、侍役の千秋実、稲葉義男等はもちろん、農民役でちらっと出てくる小川虎之助まですらっと出てくるのだから、いったいどうなっているのだろう、頭の中は。

例年通り、いろんなジャンルの今年のベスト3を以下に。

今年見た映画は100本くらいだろうか。映画館へは一度も行かず、みなTVで観たのだけれど。例年になく傑作多々あり。思い出すままにタイトルを列挙すると、というのは嘘で、さっき今年のブログを読み返して思い出したのが、「最愛の子」「サウルの息子」「ロブスター」「カメラを持った男」「チザム」「草の上の昼食」「ハッピーエンドの選び方」「マジカル・ガール」「神様メール」「僕だけの先生~らせんのゆがみ~」等々。この中から3本選ぶのは難しいが、とりあえず、「サウルの息子」「ロブスター」「マジカル・ガール」を。いずれも監督の年齢が40前後であること、一筋縄ではいかない不可解さを抱えていること、死が作品の核になっていることが共通している。これは映画ではなくTVドラマで、なおかつ初見でもないのだが、今年の収穫として「前略 おふくろ様」を挙げておきたい。主演の萩原健一の素晴らしさについては二度触れたが、脇を固める梅宮辰夫、室田日出男、川谷拓三、小松政夫、丘みつ子、八千草薫、等々、みな素晴らしい。ってことは、やっぱり演出に手抜きがないってことだろう。第一回目の、怒号が飛び交う戦場みたいな調理場風景は何度見ても目を奪われてしまう。

舞台作品はほとんど見ていないが、壁ノ花団「ウイークエンダー」、カンパニーデラシネラ「ロミオとジュリエット」には刺激を受けた。こういう作品が月に一本くらい上演されたら、この国の演劇界ももう少し活性化するのだろうが …。舞台と言えば。昨日TVで放映された「オールザッツ漫才」に出演した霜降り明星には度肝を抜かれた。彼らのことは7月のブログで触れ、「今年のM1の優勝候補」などと持ち上げたが、その後TVで見たものはいずれも不発で、M1では決勝戦にも残れず、「ABCお笑いグランプリ」での彼らは出来過ぎだったのかと思っていたら。ほんとに凄かったのだ、昨日の彼らは。ボケのせいやが動くこと動くこと。けた外れの運動量で、なおかつ奇妙というほかないその動き、そして、動きに合わせて意味不明の言葉が次々と飛び出して。まさに前回のタイトル「分からないものこそ光り輝く」を地で行っていた。そして、ツッコミ役の粗品もまた。冷静な仮面のような無表情から、高度な批評性を含んだ鋭いツッコミを見せる彼だが、昨日は、せいやのアフォーマンスが止まるところを知らないと見て取ったのか、途中から口を半開きにしたまま、まったく言葉を発することなく、ただただ呆然と突っ立ってままの状態を続けたのだ。まさに静と動の極み。記憶に新しいからであろうが、「今年一番の刺激」と言ってしまおう。本は中井久夫の「家族の深淵」。これについてはずっと、余裕が出来たら書こうと思っていたが、なかなかそれが …

今年は、「竹内集成」の連続上演を企画し実行したことで、わたしにとってはエポック・メーキングな一年となった。誰も言ってくれないから自分で自分を誉めてやろう、「よくやった」と。いや、まだまだ続くのですが。20台半ばと思われる霜降りのふたり、わたしに孫がいれば彼らくらいかと思うと、逆に勇気が湧く。次回の「チェーホフ流」は1月12日(金)を初日に14日まで。皆様のご来場をお待ちしております。

よいお年を。

 

 

 

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