竹内銃一郎のキノG語録

その一線からわき道に逸れる、平らに。逸平?! 「耳ノ鍵」解題⑫2018.02.23

競馬予想絶不調。サイコロを振って出た目を買っているのならまだしも、数字=データを時間をかけて読み込み、TVのパドック中継で出走各馬の馬体を一頭一頭、穴のあくほど観察した挙句の結果だから、これは凹みます。なにごとにおいても予想なんて出来ないのだ、一時間後にわが身にふりかかることなど誰にも分からないのだ、と居直っては見るものの …。そう、昨日、思いもかけぬことがあったのだ。もちろん、ニュースで取り上げられるような大事件ではないのだが。

あの茂山逸平くんと久しぶりにバッタリ。会ったところが、四条河原町の高島屋の地下の食品売り場だったという意外性も手伝ったのだろう、彼に「ああ …」と声をかけられても一瞬どこの誰やら分からず、それに続いた「お久しぶりです」という声を聴いて、イッペイくんだと分かって、思わずガッシと抱き合い。確か最後に会ったのは、鈴江(俊郎)くんがホンを書いた芝居に彼が出演した新国立劇場の終演後の楽屋。そんなところへ顔を出すのは滅多にないのだが、(もう時間も経っているから書いてしまおう)演出があまりにお粗末でイッペイくんが可哀そうに思え、あそこはああしたらこうしたらと、余計なお世話と知りつつ、アドバイスするために出かけたのだった。あれからもう10年ほど経ったのだろうか。一緒に3年続けて芝居を作ったのはその4、5年前(多分)で、あの頃はまだあどけなさの残る童顔、そう、いまや天井人気のフィギュアスケーター・羽生に似ていて、その顔しか頭になかったから、いきなりおじさん顔(失礼!)で目の前に出てこられても …、ということだったのだ。「おじさんになったなあ」「そりゃそうですよ」「もう40になるの?」「いえ、まだ39で …」という簡単なやりとりで別れたが、夕方のデパートの食品売り場だから結構な数の客で賑わっている中で、よくもこんなオーラの欠片もないわたしを発見してくれたもんだと、感謝し驚き。

歳月とともに見た目は変わるが、ひとの中身はそれほど変わらない、というのはわたしの持論だが、「モナ美」のモナ美とトモ世は、10年経とうが30年経とうが、メークも衣装もまったく変えないことを前提に書いている。矛盾しているようでさにあらず。見た目は中身の反映、という「舞台のリアル」を元にしているからだ。あれ? いま気がついた、前回、「モナ美」と「みず色の空、~」の共通するところに触れたが、これも、つまり、時間の経過を衣装等の見た目に反映させないという基本方針も、両作に共通するところ、冒頭に登場する60台半のユキコの衣装は、話が高校時代に遡っても、なにも変わらないのだ。

という話を枕に、「モナ美」における超えてはならない一線について書くつもりだったが、ちょっと長くなり過ぎたので、本題は次回に。と書いて、「耳ノ鍵」の初日まであと一週間しかないことに気づく。急げ!

 

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