竹内銃一郎のキノG語録

捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ …  「独演会」(4/22)について2018.03.10

いま一番お気に入りのTV番組は、NHKBSでやってる「新日本風土記」だ。二番目が同じくNHKBSの「球辞苑」。どっちも手間暇かけて作ってることがよく分かる。「新日本風土記」はその名の通り、日本各地の風景やその地に住む人々を映し出すもので、風景の美しさもさることながら、登場する市井の人々の豊かな表情・語ることばに心打たれる。笑わせても、泣かせてもくれる。それは、ドラマやバラエティー等の他番組では、見たことも聴いたこともない<純>なもの。演劇に関わる者たちが範とすべきものがここにある。

などと書いたのは、おそらく、竹内銃一郎集成の5回目、来月上演予定の「タニマラ(さびしい風)」の楽日に断行する、わたしの「独演会」を意識しているからだ。この一週間ほど、そのことで頭がいっぱい。中身をどうするか? すでに配布しているチラシには、「タニマラ」の圧縮版をとしていたが、二番煎じが面白いか? という素朴な疑念が湧いてきて …。最初に頭に浮かんだのは、以前にTVで談志の、噺のまくらだけを並べて高座にかけたものを見たことがあり、あんな風に、今回の企画でとりあげた戯曲24本すべてから、さわりの部分だけを集めて50分くらいにまとめてはどうか、というもの。以前に二度ほど、芝居でそんな超圧縮版をご披露したたことがある。しかし、あれは芝居だから出来たことで。これまで何度も繰り返し書いたが、フツーの芝居の場合、「観客」という語からも明らかなように、お客とは「観るひと」で、視覚から大半の情報を得ているから、早い話、物語の内容がよく分からなくても、視覚への刺激が心地よければそれで充分満足するのだ(例外もある)。しかし、今回のような、いわゆる<リーディング>に類するものとなると、そうはいかない。で、結局、「タニマラ」を除く5本の上演作品それぞれから一本選んで並べてやろう、ということに。以下がその具体。

①東京物語(「Ⅰ・夢ノ旅路」より) ②風立ちぬ(「Ⅱ・花ノ紋」より) ③ワーニカ(「Ⅲ・チェーホフ流」より) ④モナ美(「Ⅳ・耳ノ鍵」より) ⑤月ノ光(「Ⅵ・動植綵絵」より)

この中でいちばん古い作品は、1987年に上演された「東京物語」で、いちばん新しいのが2016年の「ワーニカ」。約30年という時間の大河を渡りつつ、全登場人物中、最年長(50台?)と思われる「風立ちぬ」の三原山から「モナ美」の、まだ小学二年生のモナ美とトモ世までを演じ分けて見せようという、素人だから出来るこの暴挙! まあ、いまのわたしには、守らなきゃいけないものなどほとんどないので、こんなことが出来るのですが …

ご来場のほど、お待ちしています。

 

 

 

 

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