竹内銃一郎のキノG語録

改ざんはわたしの常道  「タニマラ」メモ②2018.03.20

アベちゃん、例の公文書改ざん問題で攻め立てられてすっかりお疲れのご様子。悪うございましたと言って、もうやめればいいのに。でも、彼が敷いた路線を引き継いでくれそうな人材が周りにいないんだな、きっと。ご苦労さんです。

「~、栄養映画館」を読む。83年に初演があったこの戯曲は、二度単行本になっていて、一度目は85年に刊行された「恋愛日記 竹内銃一郎戯曲集」にタイトルの戯曲とともに所収され、二度目は96年に「竹内銃一郎戯曲集3」に、「戸惑いの午后の惨事」「恋愛日記」とともに収められている。2作には微妙な違いがある。2作の間に、柄本(明)さんと石橋蓮司さんによるこのホンの上演(94年)があり、その時に書き直したものにまたさらに手を入れたものが二度目のホンになっている。他の作家諸兄はどうされているのか知らないが、本を出すたび、公演のたびに、前のものに手を入れ改ざんするのは、わたしの常道である。

最初はふたつの読み比べをするつもりはなく、台詞の中に幾つ映画の題名を入れていたのか、それを確認しようと思って二度目の方に目を通したら、11本と想定した数よりずいぶん少なかったので、最初の方はどうなっていたんだろうと、こっちも本棚から引っ張り出したのだった。そしたらなんと、最初の方には映画のタイトルは一本も入っておらず。それで改めて、どこがどう書き換えられているのかを知りたくて、2本ザっとアタマから終わりまで目を通してしまった、と。数えたら、語尾の違い等の小さなものをのぞいても六ケ所あった。そのうちの二か所には映画のタイトルが入っている。以下がその一例。

男1 脱いでくれるな   男2 脱ぐよ、脱ぐ脱ぐ、喜んで (以下略)  男1 まさかおまえ、ヤケになってるんじゃないだろうな   男2 燃えてるんだよ  男1 「突然炎のごとく」か  男2 「お熱いのがお好き」なんだ  男1 これからお前のことを「陽気なドン・カミロ」と呼ぼう 男2 「勝手にしやがれ」!

カッコ内が映画のタイトルである。自分で言うのもアレだが、うまく出来てる。この部分、最初の方はどうなっているかというと、最初の三つの台詞は同じで、男2の「燃えてるんだよ」に続く男1の台詞は、「まあ、いまのところはおさえておさえて じゃあ よろしくお願いします」という、なんとも凡庸なものになっている。ま、10年の間に多少は腕をあげたってことになるのでしょうか。よかったよかった。因みに、男1は自称・映画監督で、男2は自称・助監督。ふたりで作った(ということになっている)映画の完成記念レセプションの当日、開会まであと5分に迫っているというのに列席者が誰も現れず、焦りと諦めの真っただ中、男1の恩人である「大将」から、列席するから席の用意をしておくようにとの電話が入って …というお話である。

この原稿を書くための参考になればと、あとがきも読んだが、かなり辛辣なことを書いている。といっても、その程度は知れていて。以前にも触れた「倉橋由美子全集」各巻には、作家自身による「解説」がついていて、それがまあ辛辣という言葉では収まらないような厳しい批判を自作に向けていて、「戯曲集」に長めのあとがきをと村井に依頼されたとき、頭に浮かんだのは「あれ」で、自分も倉橋由美子のようにと思ってはみたものの、氏の足元にも及ばないひ弱さ。確かに、「戸惑い~」「恋愛日記」には、厳しい言葉を並べた挙句、前者には、出来上がりを5点満点で採点したら、せいぜい2点だろうなどと書いている。しかし、この「~栄養映画館」は満点に近いと自画自賛し、「いもしない大将や御大の命令で、彼らの席を確保するために、次々と自らの服を脱いでいくと言う馬鹿馬鹿しさ! これはおかしい」と絶賛している。いや、お恥ずかしい …。

 

 

 

 

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