竹内銃一郎のキノG語録

境界を超える アンゲロプロスの「エレニの旅」を見る。2010.08.27

未見だったテオ・アンゲロプロスの「エレニの旅」を見る。
見終わって深いため息。「アマポーラ」をみんなで歌い踊るシーンは美しくて感動したなあと記すだけで、詳細はあえて書かない。いつか「アンゲロプロス論」をまとめてみたいけれど ……
アンゲロプロスの映画の多分すべては旅(人)の映画で、しかしそれは場所・空間の移動にとどまらず、現在から過去へ、過去から妄想へという時間の移動でもあり、なおかつ、こどもと大人、男と女、現実と記憶、生と死、等々の間にひかれた境界を踏み越える旅でもあって、越えたら最後、元には戻れぬ過酷な旅なのだ。
アンゲロプロスは、生半可なところで妥協しないのだな。なによりもダンドリを嫌うので、物語の成立に必要と思われるエピソードの詳述より、飛躍がもたらすリズム・流れを優先するんだな。彼の映画に水と火はつきものだけれど、もっとシンプルな事実、それは、男がいて女がいて、若者がいて老人がいてこどもがいて、そして動物がいて植物があるんだな。ああ、お金がかかってる! 等々が今回の新たな改めての発見でした。
勇気づけられる!!

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