竹内銃一郎のキノG語録

ハロー、グッバイ2014.10.03

旧社屋(?!)の最後の原稿で触れた「ハロー、グッバイ」について書こう。

これは小津安二郎の映画「お早よう」(脚本 野田高悟)を舞台化したもので、そこでも書いたように、さいたま芸術劇場の杮落とし用に作ったものでした。

まず夏休みの2週間ほど、映画シナリオの一部を使って、オーディションで選んだ高校生・大学生20人を対象にワークショップをし、その中から10人ほどを選抜して、その年の暮れに公演。これが予想を超える評判を呼んで、翌年、劇場からの要請に応えて、出演者の中に入試や就職のために幾人かが出演不能になったため、新メンバーを補充して再演。更にその12年後の2004年に、メンバーを一新し再々演。

「同窓会」に集まったのは最初の公演のメンバーで、正直、最初のこのメンバーとの公演がいちばん面白かったし、これまで100に及ぶほどの公演に関わってきましたが、稽古・公演の楽しさという点でもこの公演はベスト3に入るものでした。

なにがそんなに楽しかったのか。メンバーの大半はこれが初めての演劇で、やることなすことすべてが初々しく、その事実に促され、戯曲・演技・演劇について改めて一から考えなければならず、このスタートラインに立ち返っての作業は日々発見・再発見があって、それがこの上もなく創造的で楽しかったのです。リフレッシュ=再生の喜びとでもいいますか。彼等の目覚しい上達・変身ぶりを目にするのも大きな喜びだったし、更に言えば、メンバーの大半はこれが最初で最後の舞台になることも分かっていましたから、そういう彼等の<劇的な場>に立ち会うこと自体が感動を誘いもして。演劇と出会って、そしてその公演を最後に演劇と別れる。彼等にとってその公演は文字通り、演劇との「ハロー、グッバイ」だったわけです。

環境が変わったので、なんとなくまとまりのない文章になってしまいましたが、慣れれば調子も戻るでしょう。今日のところはこの辺で。

 

 

一覧