うろたえたけど、わたし踏ん張る。 橋本治の訃報を知って2019.02.01
ついさっきだ。散歩の途中に立ち寄った本屋で、橋本治が亡くなったことを知って一瞬うろたえる。
彼の書くものの面白さを知ったのは、今から30数年前のこと。若い知人のMが、「これ面白いから」と差し出したのは、彼の「編み物」の本。彼が作ったマフラーやらセーターやらが綺麗で、なおかつ、添えられた文章がまた面白く、それをキッカケに彼の小説やらエッセーやらを次々読んだのだった。もちろんそれ以前にも、「とめてくれるなおっかさん、~」のキャッチコピーで有名な、東大・五月祭のポスター制作者として、あるいは、小説「桃尻娘」を書いた作家として知ってはいたが、関心がなかったというより、単なるお調子者だと誤解し無視していた。おそらく、作品に実際に触れる前と後との落差の大きさが、彼の作品に過剰に傾斜する最大の理由になったのだろう。大いなる刺激を受けた彼の著作は十指に余るほどあるが、あえてひとつに絞れば、短編小説集「愛の矢車草」(新潮文庫)に収められた、同名の小説になるだろうか。まだ読んでいないひとには是非読んでもらいたいので詳細には触れずにおくが、ショッキングだけれど実に切ない、切ないけれど、勇気ある選択をして生きていく決意をする、気高い少年を主人公にした<立派な>お話である。
彼は1948年生まれというから、わたしよりもひとつ年下だ。そんな彼が、ネットによれば、バセドー病やら癌やらを患い、闘病の挙句に肺炎で亡くなったというのだから、いくらなんでも哀しすぎる。それにひきかえ、この数十年は、10年ほど前に、血尿が出て泌尿科に行ったのと、去年、あっさり蕁麻疹と判定されて終わった皮膚科の病院に行ったのと、あとは歯医者以外に病院に行ったことのないこのわたし。橋本さん、ほんと申し訳ない気持ちでいっぱいです。だからこそ、毎月のように新刊を出していた、一時期のあなたのようには出来ませんが、あとでああすればよかったと後悔しないよう、あと五年、わたし踏ん張って、頑張って芝居作りに勤しもうと思います。黙祷。