竹内銃一郎のキノG語録

チケット前売り予約開始 稽古日誌⑥2019.08.09

猛暑連日! 天気予報では連日「日中の野外の運動は避けて下さい」などと注意を促しているが、そんなの関係ネー! といわんばかりに、同じNHKは高校野球を放送し、150球ほど投げて完投したピッチャーを褒めたたえている。正気か?

昨日から前売りチケットの受付開始。近大の教え子・三上(旧姓)さんから、名古屋公演のチケット予約しましたとのメールが届く。ありがたいやら、申し訳ないやら。だって彼女、いまは千葉に住んでいるのだから。さらに、熊本在住の3人様からも予約の電話が。25歳以下及び60歳以上の方は入場料が2000円になるので年齢をお聞きすると、みな60歳以上。そのうちのおひとりは、「わたし、竹内さんと同じ71歳で、竹内さんと同じ、早稲田の映研にいました」とおっしゃる。「いえ、わたし映研には入りたくて部室の扉の前まで何度か行ったんですけど、勇気がなくてドアのノックが出来なかったんですが」と言うと、「そうですか? でも部員の名簿には竹内さんの名前がありましたけど …」と。どうなってるんだろう? 終演後に少しお話をということで電話を終えたのだったが。

今週から演出助手の丑田が、主宰する「ロイン機関」で9月上演予定の「氷の涯」演出のため週一回しかこちらの稽古に来られないというので、見るもの皆無状態での稽古はキツイという理由から、松本くんが在校生4人を連れてきてくれる。和気あいあいの雰囲気の中で約3時間、時々休憩を入れつつフル回転。心地よき疲れ。何度か台詞が詰まったり飛んだりしたのだが、確実に先へと進んでいる。一週間ほど前には、これで大丈夫か? と不安がつのったが、このレベルをキープできれば「悪くないぞ」との実感を得る。稽古終了後、疲労回復を願って(?)学生たちと一緒に飲み屋へ。もちろん、いずれも未成年の学生諸君はジュースやコーラで酒厳禁、わたしとは初対面なのに、卒業後の進路のことなどあれこれと話題が広がる。自らの将来の不安と期待を抱える彼女たちに、わたしは次のような話をした。前述の「早稲田・映研」の話を枕にして。

自分の将来がどうなるかなんて誰にも分からない。わたしは大学に入って映研に入りたかったけれど、小心のために入ることは出来なかった。しばらくはその選択を悔やんでいたが、しかし、入っていたらシナリオ研究所に行くことも、そこでわが師・大和屋さんに会うこともなかっただろうし、師の「竹内くんは天才だね」などという言葉を聞いたからこそ、おそらく今があるのだ。大和屋ゼミで一緒だった小澤さんに、彼が演出する芝居の台本を依頼され、それに出演していた沢田情児と友達になってふたりで斜光社を立ち上げ、その斜光社及び秘法零番館に集った、木場をはじめとする幾人もの優秀な俳優とスタッフたちに揉まれ励まされ、その芝居を見た桜田(旧姓)さんに戯曲集出版の声をかけてもらい、彼の仲介で、小田さん、豊川と「桃の会」を立ち上げて「今は昔、~」を上演し、ここでもふたりにさらに揉みこまれ、ご両人も出演した「榎本武揚」演出の声をかけてくれたセゾン劇場の制作澤木は前述の桜田さんの知り合いで、後に一緒に「JIS企画」を立ち上げることになる佐野さんとはこの芝居がきっかけでお近づきになり、「現代詩手帖」で東京乾電池公演「お茶と説教」を取り上げたことから柄本さん、岩松さん、そしてその後、制作としてわたしをバックアップしてくれることになる大矢さん等々と知り合い、先のJIS企画の制作を引き受けてくれ、とまあ、繰り返しになるが、早稲田の映研に入らなかったからこそ、上記のような思いもよらぬ<ご縁>に恵まれたのだ。

いつ、どこで、誰と出会うのか。それによって人生は決まるのだが、しかし、選択の是非はある程度の時間が経過してからでないと分からない。ああ、面倒な人生!

 

 

 

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