まるでディープ! 「パラサイト 半地下の家族」を見る。 2020.01.24
ポン・ジュノの「パラサイト 半地下の家族」を見る。ネットで検索すると、この映画の京都上映館は3館あり、最初は住まいから徒歩25分、散歩には適距離にある新京極へ行くつもりだったが生憎の雨降り、それで、JR京都から大阪方面へ2つ目の桂川駅から徒歩1分、イオンモール内にあるイオンシネマ桂川まで。ここのイオンモールは驚くほどの大きさ。館内の端から端まで推定350米はあり、衣料関係・飲食関係の店が立ち並ぶ巨大な商店街となっている。映画館は3階のいちばん奥にあり、なので、2階の入口から辿り着くまで5分強はかかった。
本年初の映画館入り。いつものように、本編上映の前に10数本の予告編を見せられるのだが、これが! とりわけ日本映画のなんとも詰らなさそうなこと!! アイドル系の俳優がメインで笑ったり泣いたりのアニメ風、あるいは、安っぽいCG(?)を駆使したホラー風アクションの垂れ流しの映画ばかりで。外国映画に比べて製作費が格段に安いのと、監督・スタッフのそれに見合った無能ぶりが丸わかり、こんな予告編に魅せられる観客がいるのだろうか? いるんだろうなあ。
ポン・ジュノは、去年このブログに書いた「わたしの現役映画監督ベスト10」に挙げたひとり。去年の暮れ、久しぶりに見た彼の「グエムル 漢江の怪物」に感動・落涙。初見の時には面白いと思っても、大半は、再見するとそれほどでも …となるのだが、ストーリーの展開・結末が分かっているのに、新たな発見・驚き・感動に震えてしまう、それが優れた映画の<絶対条件>なのだ。
本編開始。タイトルにある通り、主人公の家族4人は、スラム風地域の道路より下にある、半地下の部屋に住んでいるのだが、そこが、前回触れた「家に帰ろう」のラストシーンで、主人公の友人が働いていた仕事場と同様であることに、まず驚く。冒頭からしばらくは、「吉本新喜劇」風のギャグが次から次へと繰り出され、客席は笑いに包まれる、もちろんわたしもゲラゲラと。これまでのポン作品はどれも喜劇風に始まるのだが、しかし、こんなにバカバカしいのは初めてだ。そのうち、三浪だか四浪だかしている長男が、高校時代の友人から、留学する自分に代わって、いま彼がバイトしている家庭教師をしてくれないかと頼まれる。長男はそれを引き受け、対象の女子高生が住む家に出かけると、これがとんでもない豪邸で …。そこから本格的に話は転がり始め、ところどころでナンセンスなギャグも飛び出すのだが、これまでのポン映画に比べて、ストーリー展開が推定通り、というか、緩やかでというか、もうひとつ惹きつけられず、わたしは、ほんの10秒20秒ほどではあるが二度三度ウトウトしてしまったのだった、それが! 全体の半ばを過ぎたあたり、豪邸の家族たちが長男(5歳くらい?)の誕生日をキャンプ地で過ごすために空けた家に、半地下住民の家族たち4人が上がり込み、こっちも豪勢に過ぎるパーティを始めたところから物語は加速して展開、それはまるで、スタートで出遅れポツンと一頭、最後方を走っていたのに、向こう正面あたりから徐々にスピードを上げて、先を行く一頭を抜き二頭を抜き、最後の直線に差し掛かると、さらに一段とスピードを上げて先を行く他馬すべてをごぼう抜きした、あのディープインパクトの鬼脚を思わせる凄さ、こんな映画をわたしはこれまで一度も見たことがない。(続きを次回に)