竹内銃一郎のキノG語録

これは傑作!「餅ばあちゃんが教えてくれたこと」2022.01.11

8日、9日、10日と三日続いたJRA競馬、8日は初日5日で惨敗した負けを取り返したのだが、9日は的中ゼロで10日も10レースほどまったく当たらず、これはもう馬券買いはやめろという天からのご忠告かと思いつつ、この日の最終レース・中京12Rを3連単で勝負をするとこれが! 1,2番人気の間、2着に7番人気のわたしの勝負馬が食い込んで的中! ここまでマイナスだったのを一気にひっくり返して5万円プラスとなる、ヤッター! お年玉、ありがとうございます。
話は変わって。
これまで繰り返し書いているのだが、現在のTV番組でわたしが興味を惹かれているのは、「新日本風土記」「ノーナレ」「アナザーストーリー」「ワイルドライフ」「ダーウィンが来た」「球辞苑」「英雄たちの選択」等々、NHKで放映されているドラマじゃないもの、そして、関西テレビの日曜以外は毎日放映されている朝の番組「よーい、ドン!」だが、先週土曜、Eテレで夜の9時に放映された「ETV特集 餅ばあちゃんが教えてくれたこと」の録画を今朝、餅をたべながら見て感銘を受ける。
御年92歳から94歳までのおばあちゃんの日々の生活が語られるのだが、まず、高齢を感じさせない容貌に驚かされる。とにかく品があってきれいなのだ。失礼な表現になってしまうが、農家の生まれで、結婚先も貧農と思われるのにである。青森で生まれ育ったひとなので、言っていることの半分ほどはよく分からず、時々字幕も入るのだが、にこやかに語る表情、自転車を走らせる後ろ姿のカッコ良さ、山に登って笹の葉をとる仕草、重いはずの餅を軽々と持ち運ぶ下半身、顔の皴の具合等々、どれもこれもが信じられないカッコ良さなのだ。
タイトルの「餅ばあちゃん」は、彼女が60歳から始めた笹餅がこの地の評判になっているところからきている。ひとりで百個ほどの笹餅を作り、それを販売先まで自転車で運ぶのだ。そこがスーパーなのか駅の道なのか、とにかく置かれたそばから次々と買われてすぐに売れきれる。袋の中に2個入っていてひと袋170円。売上金は50袋×170円で計8500円⁈ いや、売店がその3割ほどはいただくはずだから、一日6千円の収入しか⁈ まあ、そんなことはどうでもよろしい。
笹餅作りを始めたのは、彼女が60歳のとき、或る日、養老院へ作った笹餅を持っていったら、幾人かのひとが「おいしい」といって涙を流しているのを見たからだと言う。こんなことでひとを喜ばせることが出来るのなら、と思ったのだ。亡くなった母の言葉が彼女の生きる支えとなっていて、その幾つかが語られる。彼女が結婚し、子どもがふたり産まれて、毎日の生活が苦しいとこぼしたら、母は「へえ。わたしは子どもが4人いたけど、そんなこと一度も思ったことなかったよ」と言われ、苦しい、辛いなどと言う言葉はそれからは一度も使わなくなった、とか。彼女が幾つの時なのか、母が汗を流しながら畑仕事をしている傍で彼女は寝ていて、起きて見た母は明らかに疲労困憊の風だったので、「どうしてわたしを起こしてくれなかったの?」と聞いたら、「あんたの寝顔があんまり可愛かったからね」と答えた、とか。
作り手の、「餅ばあちゃん」との距離感がいい。つかず離れず、前述したように彼女が古い津軽弁(?)で語っていることの多くは理解することが出来なかったはずだが、視聴したわたしと同様、意味は分からなくとも、彼女が何事かを語っている、そのことだけでもう十分過ぎるほどだったのだ、きっと。時々挿入される、緑色に包まれた山、青い空、雪に覆われた街並み、そして、笹餅作り、弁当作りの手作業等々のカットも実に心地よい。
今月13日の0時に再放送されるらしい。これは必見!
 

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