竹内銃一郎のキノG語録

最大の幸福とは? 間抜けなおひとよしになること???2022.01.22

昔から物忘れが著しい子供だった。いつも忘れ物をして家に取りに帰っていた。それは多分、せっかちだからだ。せっかちだから、すべき確認を怠り、結果、忘れ物をすると、こういうことなのだ。せっかちは短気にもつながっていて、短気は飽きっぽいにつながっている。
このブログを書かずにいたのは、ヒジョーに忙しかったからで、しかし、その忙しさは、前述した<物忘れ>に起因している。一日の四分の一は探し物をしているのだ。ま、新しい家に引っ越してまだ不慣れのためもあるのだろうが、この探し物の時間を半分に削ることが出来れば、もう少しゆったり生活が ……
新しい住まい。知らない土地なのでもの珍しく、毎朝1時間くらい散歩している。近所に酒蔵や名所旧跡があって飽きない。が。知らず知らず目にとまってしまうのは、石屋の墓石の値段とか、介護の文字。そのたびに、われながら「うーん」と唸ってしまう。
生まれつき物忘れが過ぎる上に、年齢からくる記憶力の減退。それを考えると恐ろしいような面白いような。
そう、ミラン・クンデラもいうように、「ひとは誰も子供」なのだ。改めて断るまでもなく、3歳の子供であれ、60を超えた爺であれ、現在の年齢で生きるのは、初めてなのだ。だから、恐ろしいけど面白いのだ。このブログは多分、忘備録として今後ますます重要なものになるだろう。もちろんわたし自身にとってであるが。

上記は、2014.03.04に書かれたわたしのブログ、「丹波篠山への小旅行 酔って候」からの引用である。老齢になっても「恐ろしいけど面白い」? 違う違う、なんにも分かってないな、67歳のお前。

昨日の朝、ベランダから眺めた雪景色は凄かった。推測10センチの積雪。時々激しく吹雪くのもカッコよしよし。こんな景色を間近で見た記憶がない。いや、待て。あったあった、80年代半ば、秘法の公演で冬の札幌に行ったことがあったんだ。そうだ、初日の舞台があって翌日、上演は夜だったので朝、小樽に行って …、うんうん、これ以上はここには書けないことがあったんだ、うんうん。
昨日のお昼前、京都河原町から阪急で兵庫の塚口へ。駅前の映画館で上映中の「リトル・ガール」を見に行く。結構な佳作だとは思ったが、多分、期待が大きすぎたのだろう、物足りなさもあり。本作はドキュメンタリーで、<リトル・ガール>は、男の子として生まれたのに女の子になりたい、それを認めてほしいという小学校生のことなのだが、映画の中で前面に出ているのはサシャ(リトルガールの母親)で、彼女が学校への抗議をカメラの前で延々としゃべるのだ、それが90分強の映画の中で多くを占め過ぎている、というのがわたしの率直な感想。サシャには3歳くらい上の兄ちゃんと、4歳くらい下の弟がいるが、この3人のやりとりにもう少しカメラを向けてくれたら、もっと面白くなったのにイ~。
19時、尼崎の熱狂の市場劇場でズンどこ姉妹の演奏稽古。阪神尼崎には17時過ぎくらいに着き、食事をし、劇場場所の確認をし、それから喫茶店でサン=テグジュペリの「若き日の手紙」を18時半まで読み、さて劇場へと行ったのだが道が分からなくなってしまい …(泣)。岩切さんに迎えに来てもらって劇場へ。19時少し前に着いたのだが、劇場では武田さんの知り合いらしい大井さん指導で3人、すでに稽古していた。う~ん。3人とも三味線、ギターなどまったく素人なのでなかなか聴かれる状態にならなかった2時間。しかし、まあ、本番まで約3か月ある。なんとかなるでしょ?
帰りの電車の中で、「若き日の手紙」の続きを読む。手紙の大半は、女友達のリネットへのもの。翻訳イマイチの感あるが、久しぶりに読み応え充分の本だ。以下はこの本からの引用。
最大の幸福とは、狩りから戻って、暖炉のまえで両手をこすり合わせ、「やれやれ!」と言い、それから十五分もかかってパイプをつめるといった、間抜けなおひとよしになることだ。

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