竹内銃一郎のキノG語録

「BURN/バーン」>「きみの鳥はうたえる」2022.02.01

先週の金曜、久しぶりに直珈琲に出かけ、直さんから柄本佑くんが出演している「きみの鳥はうたえる」は、まあ面白いですよと言われたので、家に帰って録画しておいたそれを見る。う~ん。
二十代半ばから後半くらいのふたりの男子がアパートの一室に同居していて、そのひとり、佑くんがバイトしている書店の同僚の女性(石橋静河)といい関係になり、彼女は時々佑くんの部屋に来るので、その部屋に住んでるもうひとり(染谷将太)とも仲良くなって、3人で遊んだりする。そのうち3人は三角関係になって、とんでもない事件が起こるかと思いきや、そんなことはなく、延々と仲良しこよし状態が続く。しかしラスト、半ば唐突に彼女は佑くんに、「わたしは染谷くんとつきあうことにする」と言い、それを彼は「そうした方がいいと思う」とあっさり答えてふたりは別れるが、過ぎ去る彼女の後姿を見て愛おしくなった彼は彼女を追いかけて、エンドマーク。
な~んてお話の詰まらなさもさることながら、どうもこの監督、三宅唱の演出にひっかかる。ほとんどが、ふたりの狭い部屋、書店内、飲食店、路上で物語が進行するのだが、場所の変化に見ているわたしの気持ちが動かないのは、いずれも似たり寄ったりのカットの羅列だからではないだろうか。カメラは手動で長めのカットが多く、佑くんが仕事場の先輩の言葉に苛立って殴り倒したり、その先輩が佑くんを路上で殴り倒したり、なんてシーンもあるのだが、それらの<事件>も<たまにあること>として表現されているような? とにかく、ワタシ的には心躍る事柄がなにも起こらない作品なのだ。何度か眠くなる。タイトルにある鳥が登場しないのにも少なからず白けたが、このタイトルは、ビートルズの「And Your Bird Can Sing」の直訳らしい。これに比べたら、
日曜の競馬が終わった後に録画を見た「BURN/バーン」の方が断然面白い。上映時間90分ほどの作品だが、物語の大半はガソリンスタンドの背後にある、おそらくその一部であろうコンビニ風の店内で起こる。
ふたりの女性がそこで働いている、夜。ひとりは20代前半と思われる見た目は可愛いが言動はぞんざいな女の子で、もうひとりは、30代前半かと思われる、黙っていると美人だが、話し出すと口の動きに問題があるのか、こりゃ男に持てないなと思わせる女性で、彼女が主人公。何人か客が来て、ふたりの対応差が面白い。20分ほど経過したところで、明らかに怪しい男が登場。軽い口を叩きながらぞんざいな彼女に金を出せと脅す、手にピストルを持って。ぞんざいな彼女は機転が利くのか、このレジにはこれだけしかない、とわずかな金額を差し出し、売り上げの大半は金庫に入っているが、鍵はないから金庫を開けられないとかなんとか言ってるところに、もてない彼女が現れて、「わたしは金庫の開け方を知ってる」と言って、金庫から札束を取り出して …。。
この映画は、笑わせてつつ驚かせつつひやひやさせつつ物語を進めてくれる。わたしが好み認める映画はこうでなくっちゃ。監督のマイク・ガンはこれがデビュー作らしいのだが、日本では劇場で公開されない。まったくドーなってンだ。上記の三宅唱や濱口竜介がもてはやされて、この快作が無視されるとは! 
主役の女優はティルダ・コバン=ハーヴイーという。ネットでどこの国のひとで、これまでどんな作品に出演してるのか調べようとしたが、なにも出てこない。でも、このひとは見るものの心を奪う女優さん。他の出演作を見たいのだが …

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