竹内銃一郎のキノG語録

これは新コロ接種の功罪? 「さがす」&「フレンチ・ディスパッチ~」を見る。2022.02.19

今週の火曜日、直珈琲に出かけ、直さんからW・アンダーソンの新作の上映が明後日までだと聞いてびっくり、知らなかったあ。家に帰ってネットで上映時間等を調べていると、片山慎三の新作「さがす」が京都シネマでやっぱり明後日まで上映されていると知り、翌日・水曜日に出かける。この映画も木曜が最終日でしかも11:45開始の一回こっきり、木曜には新コロのワクチン接種があり、12時~12:20までに行かなければならなかったからだ。
以前にも同様のことを書いたが、難点が少なからずあるものの、近年のこの国の若手監督の作品に比べると、「さがす」は2,3馬身先を行く秀作。今回の作品は後半に、それまで語られた話の裏にはこんな事実が …と明らかにされるのだが、その手法がわたしにはまどろっこしく思われた、上映時間の2時間を20分ほど短くすればもっと面白く見られたはずだ。しかし、各カットそれぞれに粘着力&迫力があり、退屈を覚えさせない。それは多分、主役を演じた佐藤二朗の<凄み>のためもあったのだろう。パンフレットにあった佐藤の言によれば、監督からかなりのダメ出しがあったらしい。いまのこの国の評価が高い若手監督にこんな御仁はいないはずだ、アッパレ。この貴重な片山×佐藤コンビの映画、もっとみたいゾ。
翌日の木曜。お昼頃から雪が降るというので、接種会場となった「みやこめっせ」に11時半に到着。早く行けば待たずに出来ると思ったら、そうは問屋が …、小一時間待たされる。が、接種自体は10秒で終了。映画が始まる14時までたっぷりあったので、昼飯を食べようと久しぶりに寺町京極にある「天丼まきの」に入る。この店に初めて入ったのは4,5年前のいまの時期。とんでもないうまさに感動し、カウンターの向こうで天ぷらを揚げていた女性に「おいしかったです。また来させてもらいます」とお礼を言って店を出たのだったが。いったいなにがあったのか、それから7,8度この店に入ったのだが、行くたびにおいしくなくなって、今回は多分1年ぶりだったはずだがやっぱり …。
W・アンダーソンの新作「フレンチ・ディスパッチ~」を上映するMOVIX京都は「まきの」のすぐ近く。チケットを買ってまだ時間があったので、パンフレットを買い求めたら「もうありません」と言われる。そうか、やっぱり面白いのだと期待を胸いっぱいに膨らませて上映館に入る。しかし、これが。なんだかやたらロングショットが多く、更には次から次へと登場人物が現れて、どこの誰にピントを合わせて見たらいいのかなかなか分からず、また、もしかしたらワクチン接種のせいもあったのか、ついウトウトと。ウトウトから目覚めると、さっきまでとはまた別の場所、別の人々が画面の中でうごめいているので、途方に暮れてまたもやウトウト。家に帰ってWEBでこの映画の中身を調べたら、「50か国50万人の購読者がいる人気雑誌「フレンチ・ディスパッチ」の編集長が仕事中に心臓まひで急死。「フレンチ~」は彼の遺言により廃刊を迎えることになる。編集長の追悼号にして最終号の1つのレポートと3つのストーリー。話は4つあって、それが物語の核となって …」というのがこの映画の中身。そうか、ウトウトして目覚めるとさっき見たあれと今見てるこれは、いったいどういう風につながっているのかが、だから分からなかったんだ。改めて見たいと思ったが、しばらくは見られない。ふう。
家に帰ってTVをつけ、そうだ、小津安二郎の「麦秋」を録画してたなと、それにピント(?)を合わせると ……!(次回に続く)

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